歯根膜とオノマトペ
日頃、私たちが何気なく使っている言葉で、何か上手く言い表せない時に使ったり、その時の臨場感を伝えたかったりするときに出てくる言葉を「オノマトペ」と呼びます。
「みんながシーンとした」の「シーン」
「歯がズキズキ痛い」の「ズキズキ」など
食べるときの「オノマトペ」が歯科も関わっているのではないかと思い、いくつかの文献で「オノマトペ」について調べてみました。
オノマトペとは
物事の声や音、様子や動作、そして感情などを模倣的に表す語の総称で、古代のギリシア語の 「onomatopoeía」に由来していて、日本語ではフランス語の「onomatopee」から借入された外来語の「オノマトペ」は、擬声語の意味で使われている。
また、「オノマトペ」はその音の響きから得られる意味を表すので感覚的な言葉であるが、一般語彙 よりも生き生きとして臨場感のある微妙な描写を表現するために、特に日本語にとっては不可欠な言葉要素である。
ということでした。
考えてみると日本では擬態語、擬声語、擬音語や時には名詞や動詞としても使われることもあって、時間をかけ言葉を考えて説明するよりも簡単に幅広く表現できる便利な言葉です。
しかし、外国の方は日本語を勉強するときには、日本語独特の「オノマトペ」に苦労するそうです。
食べるオノマトペは?
生活の中にいくつもある「オノマトペ」ですが、食べることと言えばどんな「オノマトペ」を思いつきますか?
モグモグ、パクパク、ゴックン、ツルツル などでしょうか。
特に赤ちゃんが離乳食を食べるときには、ママやパパなど一緒に食べる人の言葉かけに「オノマトペ」は活躍します。
耳からも食べる感覚を取り込むことでより豊かに「食べたい」や「おいしい」ということを体験するのだと思います。
他には、食べるときの歯ざわりを表現するときは、シャキシャキ、サクサク、モチモチ、などのオノマトペも使いますね。
では、この歯ざわりの「オノマトペ」を感じとっているのは、口の中ではどの部分だと思いますか?
硬いか軟らかいかなど、この違いを感じとっているのは、歯かな?と思ったりもしますが、実は歯根と歯槽骨をつなげているハンモック状の歯根膜や咀嚼筋肉中の筋紡錘(伸ばされる筋肉の長さを感知し脊髄反射を関して調節する)で、それが触覚や圧覚のセンサーになっているのです。
歯根膜の感度は一番入り口にある前歯が一番敏感なので、歯ざわりを楽しみたいときには前歯でサクサクと噛み切ります。
一方で奥歯(臼歯)は硬い物をゴリゴリとダイレクトに嚙みつぶすので歯根膜の感度が良いと少し硬い食べ物でも、とても硬く感じてしまい不快になってしまうので、臼歯の歯根膜は感度が悪くなっているのです。
このように、食べ物の美味しさには味や匂いだけでなく、噛むことで感じる硬さや弾力性も大きく影響しています。
しかし、歯根膜は歯を抜くと一緒に失われてしまうので、総義歯になると歯根膜が全くないことになります。
入れ歯にしたら食べ物の味が変わってしまったとよくいわれるのは、噛むことで感じる硬いや軟らかい、粘つくなど物理的な性質がわかりにくくなってしまうことが原因です。
歯根膜は直接見えるものではありませんが、食べるためにはとても大切です。
ウサギの実験でも三叉神経を切り歯根膜からの感覚刺激を無くしてしまうと咀嚼運動が乱れることもわかっています。
自分の歯を保ち、幅広い食品や料理を食べることで体が丈夫になります。
そして、栄養がいきわたることと、よく噛むことの刺激により、幼少期には脳の発達、中高齢期には認知症の予防となります。
口の中が健康であれば、話すことにも自信が持つことができて社会活動への参加など人との関りをも継続でき、健康長寿につながります。
自分の歯を健康に保つことは、歯根膜も大切にすること。
そして、長く自分の歯で食べていたら、食の新たな「オノマトペ」も発見できるかも?しれませんね。
大切な歯根膜を失わないように、歯の不調を感じたら早めに歯科を受診しましょう。
また、定期健診もお勧めします。
気付かないうちに進行している虫歯もあるかもしれません。