指しゃぶりを続けると歯並びってどうなっちゃうの? ~指しゃぶりと開咬のお話~
①指しゃぶりは歯列不正のもと
指しゃぶりは、専門用語として吸指癖(きゅうしへき)と呼ばれます。
指しゃぶりは子供でみられる口腔(こうくう)習癖のなかで最も多く認められます。
日常的に行う癖として指しゃぶりが残っている場合は、開咬(かいこう)・前歯の出っ歯・V字歯列弓などの歯列不正の原因となることがあります。
➁指しゃぶりが引き起こすかみ合わせへの影響
子供がしゃぶる指は様々です。
しゃぶる指の種類や方向によってかみ合わせへの影響は変わってきます。
最も多くみられるのが、親指の腹を口蓋方向(上側)に、爪を舌方向(下側)に向けてしゃぶる母指吸引癖です。
母指吸引癖の場合、まず指によって上の前歯が前へ、下の前歯が後ろへ押される力が働きます。
その状態が続くと、指と前歯が上と下でかんでいるのに奥歯がかんでいない状態になります。
すると、奥歯はかみ合うために過萌出(さらに歯が生えてくる)ことにつながります。
そうしていくと最終的には、奥歯で噛んだ時にしゃぶっている指の分だけスペースができて前歯がかんでいない状態になります。この状態を「開咬」と呼びます。
③開咬になったあとに起きる悪い癖
開咬となって前歯に隙間があると、隙間に舌を入れて前に出して嚥下(飲み込み)をする乳児嚥下が残存することがあります。
この場合、指しゃぶりをやめることができても乳児嚥下の影響により開咬が治りにくくなります。
また、指を口に入れることで舌が通常の位置よりも下に押し下げられます。この位置が習慣化すると舌の位置が通常よりも低くなり、低位舌(ていいぜつ)の状態になってしまいます。
低位舌になると、舌を上あごにつけないとうまく発音するのが難しい発音(サ行やタ行など)の滑舌が悪くなるなどの原因にもつながります。
一般的に乳児嚥下や低位舌を治すことは、指しゃぶりをやめることよりも難しいとされていて、成人になってもこれらの口腔習癖が残ることがあります。
④指しゃぶりをやめさせる方法
指しゃぶりをやめさせるためによく用いられるのは記憶療法と褒美療法です。記憶療法とは、指しゃぶりをやめることは理解しているけれど無意識に行ってしまうような場合に、リマインダーとして指に絆創膏などを巻き、指をしゃぶろうとしたときにやめることを思い起こさせる方法です。
褒美療法では、まずお子様と「1日指をしゃぶらなければシールをあげる。1カ月続いたら大きなシールをあげる」というような約束をします。
望ましい行動をとるとご褒美がもらえ、継続することにより、より大きなご褒美がもらえるようにするといった方法が褒美療法です。
⑤まとめ
指しゃぶりが引き起こす歯並びへの影響のうちの一つである開咬について説明させていただきました。
また、指しゃぶりのやめさせ方について記憶療法と褒美療法という2つの方法のご紹介もさせていただきました。
お母さんが「指しゃぶりは悪いんだからやめなさい!」といって素直に約束を守ってくださるお子様ばかりではありません。
『指しゃぶりしちゃうのはわかるけど、そのままだと大人になった時に自分が困ってしまうよ』というメッセージをお子様に届けるために、指しゃぶりで具体的にどんな歯並びになる可能性があるのかをお母様が少しでも知っていただくことはとても大切なことです。
もちろん、お家だけで癖が治れば素晴らしいことですが、指しゃぶりをずっと続けている子の癖をなくすことは簡単ではありません。
3歳以降の年齢でも指しゃぶりをしている場合は、なるべく早く指しゃぶりの卒業をしていただきたいので、指しゃぶりでかみ合わせに悪い影響が出る前に歯医者さんを受診して歯並びについて相談していただきたいと思います。