歯ぎしり治療のポイントは、歯を守ることとぐっすり眠ること
前回は歯ぎしりや食いしばりよるトラブルや原因について書きましたが、今回は治療のポイントについて書きたいと思います。
治療方法は主に以下の2つとなります。
- スプリント療法
- 行動療法
スプリント療法
現在、歯ぎしりの対策として最も一般的なのが、スプリント療法です。
これは、患者さんの口の中の型をとって、プラスチックで作った、歯ぎしり専用のスプリントを寝ている間、装着する方法です。
スプリントを装着しておけば、歯ぎしりがおきても、咬合力や摩擦力を分離させ、歯や顎への被害を減少させることができます。
ただし、スプリント療法で歯ぎしりを抑制できる可能性はありますが、全ての患者さんに対して、有効とは言い切れません。
それでもこの療法が広く用いられるのは、歯ぎしりによる被害から、確実に歯や顎を守ることができるからです。
行動療法
歯ぎしりがおきる原因や背景には、特定疾患、ストレス、遺伝、生活習慣など、さまざまなファクターが関係しています。
そのため、その発生と被害を減少していくには、原因として考えられるファクターをひとつひとつ取り除く努力を長期的に続けていく必要があります。
その中でも重要なのは、「良質な睡眠を十分にとること」です。
例えば、疲れやストレスがたまっている時ほど、なかなか寝つけなかったり、眠りが浅く、疲れがとれないことがありませんか?
また、お酒を飲んで眠気がでてきて、そのままウトウトしてしまうことは、誰にでもあると思います。
実はこのような状況こそ、歯ぎしりが起きやすいのです。
これらの状況には「眠りが浅い」という共通点があります。
睡眠生理学の研究結果から、歯ぎしりは眠りが浅いときに起きるそうです。
疲れ、ストレスがたまっていたり、お酒の飲みすぎ、たばこなどのファクターが眠りを浅くし、睡眠の質を低くすることにより、歯ぎしりがおこると考えられています。
したがって、睡眠の質を低下させるような日常の行動の問題に焦点をあてて、それらを修正するというのが、行動療法です。
歯ぎしり改善のための対応
- 睡眠時無呼吸症候群やいびきの治療
- 禁煙
- ストレスを解消する
- 寝る前のお酒をやめる
- 逆流性食道炎の治療
睡眠中に呼吸がとまったり、いびきによって呼吸が不規則に乱れたりすると、眠りが浅くなり、歯ぎしりがおきやすくなります。
また睡眠の質が低くなることで体の疲れも取れにくくなり、全身の健康にも悪影響がでるかもしれません。
たばこに含まれるニコチンには覚醒作用があり、深い眠りをさまたげて、歯ぎしりをおこしやすくします。
歯ぎしり治療を機に、ぜひ禁煙を始めましょう。
ストレスや不安があると、「起きて備えていなければ」という意識が本能的に働き、睡眠をさまたげます。
十分な休息をとり、趣味の時間を増やすなどして、気分転換を心がけましょう。
飲酒から3時間ほど経過すると、体内で分解されたアルコール成分は、交感神経を刺激する物質へと変わり、睡眠を妨げます。
寝ている間に、胃液が食道へ逆流すると、胸やけやのどの痛みなどによって睡眠は妨げられます。
逆流性食道炎を治療して、歯ぎしりがなくなったという方もおられるそうです。
これらを試みて、睡眠の質を改善し、歯ぎしりも改善できる可能性は十分あります。
しかし、これらの行動療法や特定疾患の治療は、短期間で効果を実感できるかは、やってみないとわかりません。
その間も、歯やアゴを守るため、スプリント療法も並行して行うのが、現時点ではベストな治療方法といえます。
歯ぎしり治療では、長期戦が予想されるので、患者さん自身がそのことを理解して、根気よく続けていくことが大切です。
次回は自分でできる歯ぎしりチェック法について書きたいと思います。